ブレインズ・タイムス第51号


不思議を楽しむ(1)

アムスのカボチャ


 秋になるとまわりの景色も落ち着いてきて、時間の進み方も少しだけゆっくりになるような気がする。だから秋には旅心がむくむくと頭をもたげてくるし、不思議を楽しみたい気持ちも強くなる。
 10月、ふと気づくと、近くの家に「ハロウィーン」の飾り付けがある。この家の「ハロウィーン」飾りは今年が初めてのはず..等と思っていたら、当日、中から、お化けや魔女に扮した母娘たちがぞろっと出てきたのにはびっくりした。
 どうやら、この数年、小さい子供を持つ母親を中心に「ハロウィーン」への興味が高まっているらしく、横浜元町でも原宿でも数千人規模のお化けたちの集会があったとも聞いた。
映画「E.T.」で、子供達が「ハロウィーン」の仮装にまぎれてE.T.を森へ連れ出すあたり、覚えていますか?...確かにやってみたいお祭りではありますね。

お化けカボチャ Jack-o'-Lantern の由来

 ジャックという飲んだくれ男が、彼を黄泉の国へ連れていこうとする悪魔を騙して生き長らえたというアイルランドの伝説に由来する。ジャックは悪魔を騙して生き長らえた後に結局、死んで、天国は勿論のこと地獄に落ちることもできず、罪を償うために、明かりを灯したカブを持たされて、この世とあの世を行き来しながら、いつまでも暗い道をさまよい続ける羽目になった。この石炭の火を灯したというカブが「Jack-o'-Lantern」。この風習が移民と共にアメリカに渡って、カブより大きいカボチャになったという。

お台場はイコール東京か

 モノレール「ゆりかもめ」に乗って「台場」へ行った。数台を見送った後に乗りこんだ最前席は、前面にレールが見えて、おとなでも楽しい。モノレールがレインボーブリッジの手前のループにさしかかったとき、後方に立っていた女性たちの話が耳に入ってきた。「この景色を見ると東京に来たって思うよね」と彼女たちは言い合っている。聞いていると、年に何回か、お台場に来る宮崎の女性らしい。これまで、ゆりかもめから見るループのあたりの景色が東京らしい風景だとは思ってもみなかった私は、この話に少なからず驚いた。
 それにしてもモノレールという乗り物には、ワクワクする楽しさがある。以前、フロリダ州オーランドのディズニーワールドへ行ったとき、広大な湿地にあるホテルやマジックキンダムやエプコットセンターを繋ぐのが、やはりモノレールだったのを思い出した。するすると走るモノレールの乗り心地や高い位置から見る景色は、日常からディズニーランドという非日常への移動手段にふさわしく感じられた。

 さて、多くの人はいま非日常がかなり好きだ、と言ってもよいと思う。さらに言うと、受身の非日常が好きなようだ。 ディズニーランドのアミューズメントの多くは、ゴンドラに乗っての移動、あるいは椅子がバーチャルに合わせて動く程度の座ったまま状態で楽しむアミューズメントだが、今やこれに似たアミューズメントが街のあちこちにあるだけでなく、街自体がアミューズメント施設化している、という事実にお台場は気付かせてくれる。
 お台場では、建物の中という狭い範囲にさまざまな「ショッピング」と「食」と「ちょっとしたイベント」を閉じ込め、くるくると手を替え品を替えして、人を惹きつけようする。例えば、メディアージュ4階のソニースタイルの横を入ると、急に、そこは暗い路地となる。暗さに慣れない目で狭い通路の曲がり角に積まれた木箱など見やりながら、僅か数歩を進むうちに、洞穴へ続くかと思えた通路は、和風の小道へと変化し、夕暮れの居酒屋へといざなわれてしまう。夕暮れとても仕掛けられたものだが、その鮮やかな変化には不自然さを感じさせる隙がないほどだ。

 建物の中をただ歩いている私なのに、たった数メートルを移動するだけで異なる世界へといざなう背景や照明や小道具にあやつられ、遠い体験をさえ想起させられるようなのだから、私たちはなんとアミューズメント慣れしてしまったのだろう。そんな台場を歩き回って、私はこれは東京ではない、あくまでも台場だ、と思ったのだが、消費するメディア都市が東京であれば、宮崎から来た女性たちが見た景色こそ東京というのが、まさに正解だったのだ。

アムスの枯葉

変わらない印象の人

 年齢によって似合う服が変わるという事実にいつ気づくか、ということは、変わらない印象を保てるか、ということと関係があるようだ。すなわち、気づくのが早く、うまく対処できると、あまり変わらない人という印象のまま、年を重ねることが出来るが、反対になると、妙な若づくりのために年とって見えるようなのだ。
 最近こんなことがあった。夫はファッションに興味がないので、似合わなくなった服でも平気。しかし、あまり変なのは、私も恥ずかしいので、似合いそうなのを買ってきたら、夫は一目見て「オジサン臭い」と不満そうだった。ところが数日後に、「やー、年とったんだなあ、これが似合っちゃうんだもの」と言い出したので、ははぁわかるんだ、と思った次第です。例えば、TVで見かける女性アナウンサーが急に年取ったように見えるときには、彼女は今の彼女(の年齢)にふさわしくない服装や化粧や髪型をしてることが多い。つまり、若く見せようとするのは危険で、ふさわしいのが若く見えるコツ、というわけです。まあ、私は変に見えなきゃいいや、って程度ですが..
これを上回る策は、黒柳徹子さんや、大屋政子さんのように超越して魔女的になるしかないですね。


2002年10月20日(平成14年) 発行

第50号   一覧へ戻る   第52号


top

Copyright (C) by LapinAgile