ブレインズ・タイムス第50号


機嫌の悪い人々と熱帯夜

 路上でホームで車内で、機嫌の悪い人が目につくこの頃、怒りを他人にぶつける連鎖が大きな事故を呼んでしまうことになりはしないかと懸念している。
 去年の夏も暑かったと覚えているが、今年はますます暑さが強まり、日中の最高気温が30℃を超える「真夏日」が延々と続いて、もしかして秋は来ないのではないか、とさえ思えてくる。
 都心を歩くと熱気が路上から吹き上がることがある、車で走っていると熱がゆらぎ陽炎の見えることがある。東京はヒートアイランドと化し、冷房がなければ過ごせないような暑さ、故に冷房を使う、過度に使う、するとエアコンの廃熱は建物の外に排出され、外気を押し上げる。外気が上がれば地面のアスファルトもビルの外壁もますます熱を蓄積する、建物内では暑いから冷房を強める、都市では緑地が少ないから木が水分を蒸発させて気温を低下させることも少ない、従って、夜になっても期待するほど気温は下がらない。暑い夜だから家庭でも冷房を使う、都市では深夜営業する店で冷房が欠かせない上に車の通行量も多い、夜になっても廃熱は続く、こうして明け方の最低気温が25°C以下にならない「熱帯夜」が増える。このヒートアイランド現象のメカニズムは、都市自体が生き物なのだと教えてくれている。
 そして、なかで動き回っている生き物たちは機嫌が悪い。
 電車の中での「足を踏んだ」「そっちが先だ」などというケンカの荒っぽさは、周りの人たちを凍りつかせる。関係のないまわりの人にとばっちりがくることもある。電車を降りても収まらない怒りの種は、もしかしたら家庭内の争いが火種だったかもしれない。それを弱いところにぶつける。他人にぶつける。ぶつけられた人の機嫌が悪くなる、悪い機嫌はきっかけを待ってバクハツする。このような、溜まる、吐き出す、エネルギーが上昇する、溜まる、減ることがない、吐き出す、という連鎖は、まるでヒートアイランド現象のようだ。

ぜんまい


屋上緑化

 都市のヒートアイランドを緩和しようという試みが、細々とだが始まっている。東京都は2001年4月から、新築建物の屋上の2割の緑化を義務化している。単にエアコン等の廃熱を減らす方向はあまり期待できないから、緑地を広げて植物の力を借りて気温を下げよう、という試みだ。都市の地面には限りがあり、減ることはあっても増えることは期待できないから、地表の代わりに屋上を緑地化すること、さらに壁面を緑化することが期待される。特に高層ビルではその壁面が日射熱を蓄積するので、その責任上からもぜひ緑化して欲しい。

百合


 真夏の直射日光で熱せられた屋上のコンクリートの表面温度は50℃以上にもなるのだが、屋上を緑化した場合は30℃前後まで下がるとされ、建物内の温度を下げる効果がある。
それだけでなく、雨水を保水し、水の循環形成によって外気温の上昇を和らげ、地球温暖化の原因と成るCO2の削減に貢献すること、さらに、騒音、ほこりの低滅も期待できる。
良いこと尽くめの屋上緑化だが、既存の建物では、土の加重、排水、保水の設備が必要なことなど、何らかの解決策を施さないと施工することは出来ない。一般の家庭でも、夏涼しく冬暖かい断熱効果と、美しい景観を求めて、経済的には多少の負担があってもメリットが大きいと考える人が出てきているようだ。

お勧めのサイト

柳宗理デザイン

    http://www.japon.net/yanagi/indexj.shtml

 民藝運動の指導者だった柳宗悦の息子で、工業デザイナーの柳宗理のサイト。コルビジェに心酔した柳宗理のデザインは、図面をひくだけでなく、かならず模型を作って構造を確かめていくというデザインの方法をとるという。年譜とデザインをたどってみると楽しめる。

Chrome Hearts

 この秋、流行すると目されているクロス(十字架)デザインのアクセサリー。ローリー・ロドキン、ミハエル ネグリンなどクロスが充実したブランドが人気化しているが、クロスといえばクロムハーツ。ユナイテッドアローズが日本での販売を始めた10年位前、黒皮にシルバーのクロスを装飾したクロムハーツの皮ジャンを見たことがある。皮質のみっちりした重さといい、クロスの硬い美しさといい、とびっきりの悪ぶりを発揮する美しさに一目ぼれして以来、気になる存在のクロムハーツだったが、いまや、クロス・アクセサリーの王者にしてシルバー系の頂点を極め、素材にダイヤモンドやピンクサファイアを使うまでになった。セレブご用達となったクロムハーツは、ハーレー好きバイカーたちが自分たち流を表現した悪っぽい感じが薄れて、洗練度を高めている。しかし、元来、宗教的シンボルであるクロスをファッションとする心理には背徳への憧れのような屈折がなければ面白くないと思うのだが。この秋のクロスにはそんなカウンターカルチャー的な要素はなく、もっぱら装飾的なものになっている。

パッチワーク


パッチワークキルトが仕上りました。 「着手」がいつだったか、忘れているほどですが、とにかく出来上がりました。出来てみると、次の一枚に着手したくなるのが不思議です。


2002年08月08日(平成14年) 発行

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