ブレインズ・タイムス第47号


あけましておめでとうございます

クロスステッチ刺繍
エクセル表を使って作ったクロスステッチ刺繍の図案
アーリーアメリカン調の“馬”のいる風景を作りました。


新しい年2002年

 子どもころの正月は、冬空が晴れ晴れとして空気が澄み、寒さがきりりと気持ちよいことくらいしか実感がなく、大晦日と元旦の違いと言われても、よくわからなかったものだ。けれど、今年は違う。世界的に良くないことが多かった年から、新しい年へと光の方へ踏み出したい気持ちが強い。
 踏み出す方向を指す羅針盤として、これまで生活に、便利さや心地よさを追い求めてきたことへの反省がある。モノを消費することの「結果」や「まわりへの影響」を意識して生活しなければならないというのは、昨年に起きたいろいろな問題、「食物」「環境」「不公平」などに関する問題の根本には、「効率」を求め過ぎる価値観自体に問題があることがわかってきているからだ。

お勧めのサイト

 Slow Food   スロー・フード

lumaca_editoriali ← シンボルマーク

    http://www.slow-food.com/cgi-bin/SlowFood.dll/slowfood_com/scripts/default.jsp

 スローフードは、アメリカ系フランチャイズのファーストフード店の進出に危機感を持った人たちが、伝統的な母の味を守ろうと起こした社会運動で、上記のURLは、1986年イタリアのブラ(BRA)で始まったN.P.O.(Non-Profit Operation 非営利活動)本部のサイト。
スロー・フード活動のテーマは、
●伝統的な食材や料理、良質の食品や酒を守る。 ●良質の素材を提供する小さな生産者を守る。 ●子供たちを含め、消費者に「味」の教育を進める。

「食べる」ことについて

 「狂牛病」問題は、私たちに「食べる」ことの意味を問い直す時期がきていることを知らせている、という理解もできる。
効率よく牛肉を育てようとした先に「病死した牛の肉骨粉を含む飼料」があり、概ねこの飼料によって「狂牛病」が伝染したということは、同じ文脈で作られる作物にも大きな問題が隠されていることが考えられる。故に農作物、酪農品を購入する立場の消費者側は、食べ物の作られ方を見張る、あるいは購入するときに選別するなどの行為で自らが監視する立場をとらねばならないだろう。
これと同時に、食べる側の姿勢として、食べることの「効率」は、基本的には「残すところなく食べる」ことを心するべきだろう。
 食べることに関連して、朝日新聞(2001年7月24日)に「安心して食べたい」という特集記事の3回目として「給食を通じ考える力」という記事があった。
 英国デボン州ハートランドの私立中学校「ハートランド・スモールスクール」の例で、この中学校では生徒が給食の調理に参加している。そして、菜食主義のこの中学校では、実際の食事作りを通じて、生徒に食べ物について学んで欲しいという方針があり、食材も、環境保護の視点から有機栽培品を、また、地域経済を支える目的で地場産品を使っている。さらに途上国の人々の自立を助ける目的のフェアトレードの農作物も使っているという。
 日本でも私立自由学園では創立の頃より、親が交代で毎日の給食作りを行っている。「子供たちに温かい昼食を食べさせたい」という親たちの考えで始まった給食作りは、約80年も続き、いまも自由学園の伝統のひとつになっている。
 どちらの例も子供の食事をおろそかにしない、という考えを実践するものとして、学校での食教育のあり方を示す好例となっている。

ポプリ

クリスマス用にと100個近く作ったラベンダーのポプリです。

新和風

 掃き清めた玄関前の松飾り、床の間に飾られた正月の花、餅飾り、おせち料理の入った重箱...その色合いは、「松の緑」「竹の緑」「南天の実の赤」「餅の白」「塗りの黒」...こんな原風景を目の中に残している世代は中年以上なのだが、このところ「新和風」というスタイルが、インテリア、食事、ガーデニングへと広がりをみせている。
 「洋」と「和」を巧みにミックスしたフュージョン感覚のインテリアは「和む感じ」が心地よいと人気化しているが、この心地よさは、実は、日本人が古くから持っている自然観や、アシンメトリーな美への共感とも深く関わっている。
 日本文化は「自然のあり方」を美の手本としてきたが、デザイン化されたシンメトリーの美しさとは異なり、一見、無造作に見える「自然」の美しさにも規則性のあることが、70年代に、フラクタル理論という理論で概ね証明されている。
 フラクタル (Fractal)とは、秩序のない複雑な形と思われてきた海岸線や山肌のような形状が、いくら近付いても同じような複雑さで繰り返されることを指す。このような「自己相似性」のある形状をフラクタルと呼び、「秩序のない複雑な形と思われてきた非定形の中にも規則性があり、数式で表せる」ことをマンデルブロ(Mandelbrot)が証明(1975年フラクタル理論)したものだ。
 秩序がないように見える「和」の美にも、数式で表すことが出来る秩序があることには驚きを覚える。さらに、コンピューター・グラフィックスでは、マンデルブロ数式を使ったものをよく見るが、PCが「自然」の美を追い求めるというのもなかなかおもしろい。
 いま「和風」に心ひかれるということをもう一度問い直すと、単に和風は「和む感じ」がいいから、といった受身の関わり方ではなく、「自然と対話し、自然に学ぶ」という日本に古くから伝わる精神をゆっくり考えてみることが、求められているのではないだろうか。


2002年01月01日(平成14年) 発行

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