ブレインズ・タイムス第42号


21世紀の始まり

 2000年前にキリストが生まれたという歴史にリアリティが感じられる新世紀の始まりです。隣人愛に一生を賭けたキリストの姿は、今の社会に最も必要とされるあり方として、今も新しい世界を開いて見せるように感じられます。そして、なぜ2000年前にキリストが愛することのみ示したか、という問いの答えとして、2000年前も現在と同じように殺伐とした時代だったのだろうとも考えます。
 21世紀は過去一切を引きずって出発するしかないのは承知で、新しい、こだわりのない目を持って始めたいと思います。

こだわりのない目で見直さなければと感じていることのひとつ、「バリアフリー」について

 足を怪我したとき、ベビーバギーを押していた時期には、東京という都市の歩きにくさを痛感して、いつもと違う都市を実感しました。最近では、このようにハンディを抱えているときに感じることを体験してもらえるように、という試みも増えていて、一例をあげると、早稲田商店街では、一般の子供たちに「車椅子で町を移動する体験」という催しを毎年行っています。体験してわかることとして、車椅子で移動しやすい道は、ベビーバギーや荷物カートの移動にも便利、小さな子供にも老人にも歩きやすい、ということがあり、この視点から町や建築を見なおすと、小さい子供に便利とは老人にも便利、ハンディキャップを抱えている人に便利とは働く人にも便利、などと相互に共通していることが多いとわかってきます。バリアフリーとは、まさに不自由のある人にもない人にも役に立つことを考える、ということになるようです。

ブランドうんちく講座
Fair Isle Knitting  フエアアイルニット

 英国フェア島産のニットのこと。
今では水平位置に帯状に幾何学模様が編み込まれたニットをフェアアイルニットと総称するようになってしまっているが、もとはフェア島で作り出された編物で、現在でも、FairIsle's のトレードマークをつけているのは、正真正銘のフェア島産のみとされている。いま伝統的なスタイルのフェアアイルニットに使われる色は、赤、ブルー、茶、黄、白だが、1920年頃には、茶、グレー、小鹿色、白のナチュラル・ウールの色しか使われなかったという。

まっさらな目で見なおす気持ちから、白にまつわるいろいろを集めました。

 手芸品と言えば鮮やかな色彩を思い浮かべる一方で、真っ白い手芸品も世界には数多くある。南仏プロバンスの「ブティ」は、白い布に白い糸で模様を刺し、そこに詰めものをして、模様部分にふくらみを持たせ、白一色の中に模様を浮き上がらせるもの。同じように静かだけれど華やかな白い手芸品として「レース」もあります。

「Honiton Lace」を盛り立てたヴィクトリア女王の話

 ヴィクトリア女王以前のイギリス貴婦人は、フランス産レースに執心して自国産レースは使うことがなかったが、1839年ヴィクトリア女王が、自国産のホニトンレースを結婚式で採用、以来、子供達の洗礼服にも使ったことから、ホニトンレースはイギリス国内で一気に人気化してブームとなったという。レースピローの上に型紙を置き、その上にピンを打ちながら、ボビンに巻いた糸を絡ませて、柄を編んでゆく、気の遠くなるような手仕事、ホニトンレースの展示はヴィクトリア&アルバート・ミュージアムが充実している。

ボーンチャイナについて

 イギリスが発祥。白磁の粘土に欠かせない「カオリン」がないイギリスで、白さを求める志向錯誤の中から見つけた、カオリン粘土の代用として「動物の骨灰」を混ぜて焼き上げる方法がボーンチャイナ。牛の骨灰が原材料の50%以上をしめるファイン・ボーンチャイナは、ぬくもりのある白さが特徴的。

お勧めのサイト

Fair Isle 公式サイト
http://www.fairisle.org.uk/
フェアアイルニットやフェア島の鳥たちを見ることができる。
白糸は染色が自在なため珍重されてきた歴史もある。

flower

白いウールの歴史について

 羊の種類は3000種といわれるが、羊から刈り取られるウールは、羊の血統によって「メリノ」「クロスブレッド」「その他」に大別されている。はるかローマ時代にさかのぼると、羊の毛の色は白、茶、黒などが混ざり合っていたそうで、ここから、糸にしやすく、手触りよく、どんな色にも染めることの出来る白い羊毛を育てることを目指した結果、ローマ統治下のスペインで開発されたのがメリノ種。「クロスブレッド」は雑種のこと。さまざまな種類の羊をかけ合わせて新しい血統を固定した羊で、毛はメリノより太く、品質もさまざま。「その他」に分類されるのは、野生種の羊の毛。
 さて、「ウール」呼ばれる羊毛と、「ヘヤー」(カシミヤ山羊の毛)や「モヘヤ」(アンゴラ山羊の毛)などの獣毛とは、繊維の組織構造が違う。獣毛は、ウールに比べ縮絨性、巻縮性は劣るが、羊毛に比べて平滑。風合い的に言えば、手触りが滑らかで光沢に恵まれているが、絡み合う性質に乏しく、フェルト化はしにくい。また、獣毛には繊維の髄が中空になっているのものがあり、これが温度の伝達を妨げため、冬に使うと暖かく、夏に使うと涼しいという効果がある。一般に獣毛は羊毛に比べて吸湿スピードが速いものが多く、モヘアやパシュミナもこの点から夏にも向いている。
 パシュミナはネパールや中国チベット自治区の標高4000メートル級の山で飼われているカシミヤヤギの一種からとれる下腹から首にかけての毛、ネパール語で"最も柔らかく暖かいウール"という意味で、原糸が白色で細くて柔らかい毛からできているものが良質とされている。カシミヤに比べ糸が細いのが特徴で高価。主にストールにされて、数年前から日本でもブームになっている。一般的にはパシュミナ70%、絹30%の交織が主流で、パシュミナの柔らかさ、ぬめり感と、絹のつややかさ、染色数の多さが人気の所以とみられる。


2001年2月10日(平成13年) 発行

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