ブレインズ・タイムス第40号


 

 80年代に大流行した高級ブランドのロゴがパワーアップして復活した。ふた昔前は、ソウルに行くとヴィトンのモノグラム商品が揃う(すべて偽物、モノグラムの上着からスリッパまで)というのが冗談のような本当だったのが、この冗談が本物になったような、シャネルのロゴびっしりのタイツ、ロゴプリントで全身を覆うグッチ、ディオール、セリーヌのロゴドレスやパンツスーツ。
 ひとめで高級とわかるブランドのあからさまな主張は、ブランドの生き残りを賭けた戦略だが、着る人はブランド力を借りて自己主張をする。主張する服にふさわしく、シルエットも肩パッド入りジャケットが復活し、スーツが多くなってきた。「着るもので、出来る女を主張しなくても大丈夫」という雰囲気があった90年代のナチュラルで肩ひじを張らないフェミニンなファッションとは大きな差を感じる。
 さて、ニュートラ、70年代後半から80年代に流行った、いわゆる山の手スタイルの着こなしで、日本独自のファッションだが、構成要素は世界的なもの...ひざ丈スカート、ボウタイブラウスとスーツ、プリントスカーフ、チェーンベルト、ブローチ...と、クラシックな装いの要素が復活していることが背景にある。
 ヨーロッパでは、景気のいいアメリカをターゲットとして意識しているため、アメリカのお金持ち好みの贅沢なクラシック・ファッションが復活してきたとも、このところ新しいアイデアが出ないファッション界では50年代、60年代と過去のファッションからインスピレーションをもらうことに頼っているが、いよいよ80年代も回顧ファッションの仲間入りをした、ともいわれている。日本では不況にうんざりしてきた女性たちが華やかなファッションで景気づけしたいと感じているのか、いわゆる男ウケするニュートラで生き残りを図ろうというのか、無意識にせよ無関係には思えない、今回のニュートラ復活だ。

「公共の場」という意識

 公共の場とは何か、という感じ方に大きな変化があるようだ。つい最近を振り返ってみても、電車の中で丹念に化粧をしていたOL風、おにぎりを食べていた女子高生風、歩道を占領していた若者の一団、携帯電話でとても私的な話を歩きながらしていた主婦、と次々と思い浮かぶ姿がある。いずれも自分の世界に浸っているらしい様子だった。
 公共の場とは、さまざまな人が、(動物もいますね)、共にする場ってこと。つまり、生き物同士がシェアし合う場なのだけれど、今は、自分だけのスペースに近い行動をする人が多くなった。以前は、もう少し、自分のうちではないから、という遠慮があったのだけれど。
 遠慮しているより、自分らしさをアピールしないといけない、という教育が行き渡ってきたことと平行しているのか、公共の場でも、自分を出せるし、自分の心地を優先する、という人が増えている、ということなのか。それにしても気になるのは、若い年代から始まったこの風潮が大人に伝染しているように見えること。
 自分の心地を優先するのは結構なことなのだが、自分を優先するだけで、人の心地を踏みにじる、というのでは情けない。自分の心地を優先するからこそ、同じように感じるであろう他者についても尊重する、と考えたい。

激甘

 激甘といわれる飲料やスナックが目につく。
これまでのチョコバーやファッジは激甘ではあっても、激甘だからともてはやされたことはなかったと思う。むしろダイエットの敵という位置にあったのだけれど、激辛の裏返しでもあるのか、また、激辛と同じくある種のストレス解消を期待しているのか...実際のところ甘いものとストレス解消の関係には、理由づけが出来る。
糖は生命維持に必須のもので、消化吸収がよく即効性のエネルギー供給源となる。このため、特に朝、糖を摂取することは効果的だし、疲労回復にも効果が高い。「なんか疲れてるー」と感じたときに甘いものを食べるのは、効果絶大。さらに脳は、体全体の20%ものエネルギーを消費するため、ストレスで疲れた脳の疲労回復にも効果が高い。
また、女性は、女性ホルモンとの関連で甘いものを食べると機嫌が良くなる、ということもあるのだそう。というわけで、上手に食べる激甘は、自己コントロールの助けになりそうだ。
さて、人気の激甘は、スタバ(スターバックス、ね)の飲料「キャラメルマキアート」(カフェオレにバニラシロップ、キャラメルソース)、同じくスタバの「ランバフラペチーノ」(ココアとチョコレートクッキーのシェイクにホイップクリームとチョコレートソース)そして、スタバのシナモンロールも人気だが、本家はシナボン。
公式 cinnabon サイト
http://www.cinnabon.com/flash.html
シナボンの「シナボン」とは、パン生地にシナモンシュガーをたっぷりのせ、渦巻き状に焼き上げるいわゆるシナモンロールパン。本家シナボンは、85年にアメリカ・シアトルで創業、シアトルズベストコーヒーも持つAFC(アトランタ)の傘下に入っているが、ここのシナボンの上には、秘密のレシピで作られるフロスティングがたっぷりのっていて、焼きたてはとろーっと溶けている。
今のところ人気の激甘はアメリカからの商品が多いけれど、今後、ヨーロッパ等の激甘がくれば、もっと面白くなりそう。


2000年8月10日(平成12年) 発行

第39号   一覧へ戻る   第41号


top

Copyright (C) by LapinAgile