ブレインズ・タイムス第39号


ブランドうんちく講座   BURBERRY バーバリー

 1856年トーマス・バーバリーがロンドン西南のベイジングストークで洋服店として開業。英国王室御用達ブランドとして、またコートの代名詞としてもよく知られているブランド。
 薄茶に黒・白・赤の「バーバリーチェック」は1924年からコート裏に採用したものという。この チェックをコート以外に使った商品は、1967年パリのファッションショーでの傘が初めて。その後、 バッグやマフラーなどに展開してゆき、今では、色の組み合わせが約20種、300点以上の商品に使用 されている。
 男性のコートとしてバーバリーは定番中の定番だが、近年、女性のファッションとしては面白み にかけるきらいがあった。しかし、1996年、新ブランド「ブルーレーベル」を導入して以来、積極 的な革新を進めている。「ブルーレーベル」は、デザインコンセプトを「 J・ケネディやA・ヘプバ ーンが今20歳だったら何を選ぶか」に設定し、クラシックで品のいいスタイルに流行のひねりをき かせている。そのため、親が娘に着せたい服のひとつとも言われるようになった。
 1999年には「バーバリープローサム・コレクション」が誕生。
イタリア人のロベルト・メニケッティーがデザインする「プローサム・コレクション」は、バーバ リーを完全にモードラインに押し上げ、人気を博しているが、この流れの中で昨年1999年からバーバ リーのコートが女性に復活している。雑誌を見ると、2000年春夏コレクション会場のスナップでは、 世界中のファッション誌の編集者たちが、バーバリーのコートを着ている。

バーバリー・チェックのストール

バーバリー・チェックのストール


表側がチェックのコートあり、真っ赤なバーバリーあり、古着バーバリーあり、とさま ざまなバーバリーが見られるが、着方でのお約束事がこれと言ってないのが、今の着方。メニケッ ティーは、ファッションのフュージョンとでも言うべき、「ブランドもあれば古着もあればチープ なもので着崩すこともあり」がおしゃれ、という今の感覚を理解して、これに適うモードを作って いるようだ。
「プローサム・コレクション」以前のバーバリーは、クラシックで生真面目な印象があり過ぎ、現 代的なセンスの良さから遠くなっていたのだが、メニケッティーは、「チェック」「コート」のよ うなバーバリー独自のパターンを残しながら、マテリアルを壊すことで、新しい感覚を吹きこんで いる。例えば、ブルゾンに使われる皮革は、使い古した皮ボールの表面のように加工され、深みの あるグレーの表面に白っぽい粉がふいたように見える。しなやかで柔らかく手触りもよい。あるい はサラッとした触感の布やTシャツに、バーバリーチェックをアレンジしてプリントしてしまう… 「マテリアル」を壊し「パターン」を残してデザインされた服は、ひと目でバーバリーのものとわ かるが、同時にこれまでのバーバリーにない新しいものだということもわかる。実はこの関係、カ ール・ラガーフェルドが「シャネル」の立て直しを行ったときに使った手法と同じで、ラガーフェ ルドは、「キルティング」や「ゴールドチェーン」をパターンとして残し、マテリアルのうち特に 「色」を壊して、新シャネルを大成功させた。
 目印になるパターンを抽出して残し、マテリアルを大きく変化させるこの手法は、どの商品分野 でも応用できる老舗リニューアル策と思える。

5月、5歳の息子とふたり旅でロンドンへ

 コンラン卿がプロデュースするレストラン等の「モダン・ブリティッシュ」系の成功を皮切りに、 ロンドンの外食事情はおいしいロンドンへと変身しているという。
 この1、2年、日本でもアジア・ブームといわれているが、英国はもともと世界中に植民地を持っ ていたためにエスニック料理が多い、なかでも新しく人気が出てきているのは「アジア・フュージ ョン」というもの。タイ、ベトナム、日本、どこであれ、本格エスニック料理ではなく、アジアン テイストの素材や調理法をブリティッシュにアレンジするという新ジャンル。日本で「東京キュイ ジーヌ」といわれるジャンルが人気化しているのと呼応する、食のフュージョンとは、「本格派」 が持つ一直線のこだわりではなく、自由に良いところを取り入れていく、感性の料理、ここにも編 集感覚が生かされるようだ。
 さて、子連れの旅行で気を使うのはレストラン選び。けれど上記のようなレストランのいくつか は、おしゃれな場所にも関わらず、夕方までであれば、子供と一緒でも全然問題ない、子供の方も 食べやすい。
 加えて、美術館のレストラン、コンラン系カフェ、伝統的なフィッシュ&チップス店と…元気に 快調に食べ歩いたのでした。さらにお助けメニューとなったのが、朝食メニュー。「イギリスでお いしいものを食べたければ朝食を食べろ」と言ったのは、サマセット・モームだそうですが、イン グリッシュ・ブレックファーストを、朝でなくても食べることが出来る店、というのも結構ありま す。…卵、ソーセージやハム、トースト、ポテトチップス、ビーンズ(トマトで煮た豆)、オレン ジジュース、ミルクティーと、子供が大好きな食べ物を朝から閉店(夕方5時くらい)まで食べさせ てくれる、町のどこにでもあるような古っぽいカフェ(食堂)は、地元の人たちが利用するので雰 囲気もサービスも上々でした。


1999年6月10日(平成11年) 発行

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