ブレインズ・タイムス第37号


 

 2000年が明けた。21世紀が新しいミレニアム(千年紀)に相応しい幕開けとなるかどうかは、ひとり一人の考え、生き方次第。さまざまな形の暴力や大量殺戮が繰り返された20世紀とは違う世界に変えてゆきたいと切実に願っている。
国内的には暗い事件の続いた90年代が終わって、明るい新しい年を期待する...期待したい、気持ちが強いのだがどうも先も暗く見える。
 ジャック・アタリ著「21世紀事典」には<日本は外に向かって扉を開かなければ、没落を避けることはできない>とあったが、年末に歩いた街の人々の「歩き方」を見るだけで気持ちが暗くなるのを押さえられない。斜めに横切ってきてぶつかる、後ろから突き飛ばす... 周りの状況を見ない、自分や身内には気配りするが、他者には無関心な人が増えている。
外に向かって扉を開くとは、外交上という限定の範囲内だけでなく、自分以外のもの、自分と異なる文化を持つもの、自分以外の生命に対しても、と範囲を広げてゆかないと意味のないものと考える。

明るい光のいろ

 2月、光の色が春になる。 それまで待ちきれなくて買った「水仙」の色は早くも春の色。黄色は明暗の度合い(明度)では白の次に明るい。白に似合い白をひきたてる色でもある。白玉椿のしべの黄色は花びらの白さをより白く見せる、枯れた色彩の冬景色の中で目に染みる色彩だ。
ファッション業界の2000年春夏パリコレクションでは、明るく澄んだピンク、イエロー、グリーン、ブルー、パープルと鮮やかな色が一斉に登場した。無彩色でシンプルな服に鮮やかな色を挿し色として使う、といった前シーズンまでの色使いからがらりと変わって、カラフルな着方が出てきた。
この春、ルイ・ヴィトンがマッキントッシュに作らせたトレンチコートは黄色。本来、全身に使うまっ黄色は、洗練された色とは言い難いのだが、鮮やかな黄色には新世紀に対する期待感がこめられているように見える。
個々の色彩が主張し合う中から新しい美しさや法則を見つけてゆく…21世紀の思考方法として、狭量な決めつけを排除し、異文化から新価値を発見する放浪者の目を出発点としたい。

ブランドうんちく講座   TERENCE CONRAN テレンス・コンラン

 「デザインの98%は機能性、残りの2%は美意識」と主張する英国インテリアデザイナー。1931年LONDON生まれ。1952年家具デザイナーとして出発。1964年家具店ハビタをオープンして日本にも出店(後にハビタは売却)。1973年フルハムロードにザ・コンランショップをオープン。1985年SIRの称号を授与される。1987年ミシュランビルを購入し、移転(1909から11年に建築されたミシュランビル)。いまもミシュラン坊や(Bibendum)がビルのステンドグラスに姿を残している。1994年西新宿3丁目新宿パークタワー3・4階に東京店をオープン。キングスロードの高級スーパー&レストラン『Blue Bird(ブルー・バード)』など、レストランのプロデュースでも多くの成功をおさめ、パブやティールームが主流だったロンドンの外食シーンを、おしゃれにおいしく変身させた仕掛人といわれる。息子のジャスパーはファッションデザイナー、トムは料理人。
 ザ・コンランショップは、Quality(品質)、Choice(選択)、Pleasure(楽しさ)、Eclecticism(調和)という4つのキーワードで構成され、世界中からセレクトした商品を販売している。


2000年1月6日(平成12年) 発行

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