ブレインズ・タイムス第34号


おいしい水

 なかなか難しいのが「おいしい水」の定義です。
厚生省では、pH6.5〜7.5、硬度50以下のほぼ中性でやや軟水をおいしい水として提示しています。しかし、現在市販されている水には、pH5.6という弱酸性から、pH9.7のかなり強いアルカリ性の水まであります。
 また、硬度ではスイス、フランスに高いものが多く、1500以上の超硬水もあります。超硬水は味覚的にも硬い味のする水で、軟水は柔らかい味の水。実は、水のおいしさは用途次第ということができるのです。一般に硬度が低い水は柔らかくて味がない故に日本茶や、炊飯などデリケ−トな味の調理に適しています。口の中でジャリジャリと感じられる硬度の高い水は、発汗した後の水分補給に最適。ミネラル分を多く含むためナトリウム欠乏等の予防にもなります。 肉類や油の多い食事の後は、弱酸性の水が口の中をさっぱりさせます。また肉体疲労や酒の飲み過ぎ後には、アルカリ度の高めの水が細胞をいきいきとさせてくれます。
 最後に、通常、飲み水としておいしいと感じる水は、pH7〜8前後、硬度40〜120位の水で、温度は体温から25度前後低めの10〜12度位の水。氷を入れて冷たくした状態では水の味は味わえません。10〜12度という水温は、自然の中で清水や湧水を飲んだ時に「おいしい水!」と感じる水の温度です。

うわさ話と企業

 噂がいかにパワ−を持つかの例として、宣伝上手といわれる「味の素」と噂の関係を歴史的にたどってみます。

誓って天下に聲明す
味の素は斷じて蛇を原料とせず
味の素は蛇より製造するものなりとの.....中略.....味の素は斷じて
蛇を原料とはせず、弊社は其名誉を賭し全責任を負て.....略。
味の素本舗 株式会社鈴木商店  取締役社長 鈴木三郎助

 これは、1922年、新聞の半頁を使った鈴木商店(現・株式会社味の素)の社長声明文の一部です。
この声明文は、1918年頃ある寺の縁日で香具師が味の素の原料は蛇であると口上を述べた事に始まり、個人雑誌として名高い『スコブル』、『赤』を発行していた宮武骸骨がこれをおもしろ可笑しく書き立てたため、噂が急激に広まったことに対応して出されたといわれています。味の素は1909年5月1日「食品界の大革新・理想的調味料・理学博士池田菊苗先生発明・美食に飽きたる家庭に味の素をすすむ・買って便利、贈って安心・理想的調味料・世界的調味料・・・等」と、あれもこれもと書き立てて華々しくデビュ−した商品です。
 鈴木三郎助は当初からあらゆる宣伝媒体を利用する人でしたが、10年程はあまり認知されず、広まり始めた頃に「味の素の原料は蛇」の噂が広まり、これに対抗して上記の声明文を新聞紙上に出したようです。しかし、これを契機に味の素の名前は急激に認知され、売り上げも上昇していきました。さらに1960年代初頭から、脳細胞のアミノ酸にはグルタミン酸が最も多い事や、グルタミン酸が神経中枢の働きとも関係があるという脳生理学者の論文を引用したため、「味の素を食べると頭が良くなる」という口コミが広まっていった経緯もあります。これも拡販に大いに貢献しました。当時、多くの母親が子供の食事に味の素を多用していたことは今からすればやや不思議な出来ごとです。続いて「味の素は石油から出来ている」という噂がひろがったこともありました。これに対して行われたキャンペ−ンと見られるのが、1983年から始まった「麦からビ−ル、さとうきびから味の素」というコピ−。この宣伝により、味の素の原料は天然の植物であり、石油化学合成物ではないと認知させ、続いて、健康的な食生活に奉仕する企業であるというイメ−ジを「ちゃんとちゃんとの味の素」というコピ−でアピ−ルしました。現在も「野菜応援団」と食材を前面に出した広告で、健康的な食生活をアピ−ルしています。

ブランドうんちく講座   Hallmark ホールマーク

 USA Missouri州のカード会社Hallmark Cards,Inc.の社名、ブランド名。1911年JoyceとRollieが絵はがき、ギフト用品、文具の専門店としてHall Brothers,Inc.という名称で創業。1915年から自社のオリジナル・グリーティングカードを売り出し成功する。製品は世界中の言語で世界中で販売され、同社はグリーティングカード市場で1の企業。特に有名なのが1941年に発売した’Thinking of You’カードで、これは現在でも同社のベストセラーであり続けている。

1998年9月10日(平成10年) 発行

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