研究テーマ

食酢・酸味料

食酢は酢酸、クエン酸、アミノ酸などから構成されている酸味料である。
酢の歴史は古く、バビロニアでは紀元前五世紀からあったといわれ、実に7千年もの間使われてきた。
酢の語源についてはいくつかの説があるが、昔は辛酒、苦酒と言われていた。 酢と言う文字は、酒の意味を持つ「酉」と時を重ねるという意味の「乍」を合わせで出来た文字で、まさしく酒を長い時間かけて発酵させて出来たものと言える。
日本に酢が入って来たのは酢の持つ長い歴史の中では比較的新しく、三、四世紀頃に酒作りの技術と共に中国から渡来したと言われている。それ迄の日本では柚子や橙などの絞り汁が酸味料として使われていた。
食酢の原料は、日本や中国などでは米が主なものだが、世界的に見るとジャガイモなどの澱粉質原料や糖蜜、パルプ廃液などを精製し、高純度のアルコ−ルを作り、これを酢酸発酵させた「アルコ−ル酢」やリンゴやブドウの果実を原料とした「果実酢」が多い。
その他、北欧では麦芽から作った麦芽酢(モルトビネガ−)や北部アフリカや中近東などではなつめ椰子の実(デ−ツ)から作ったデ−ツビネガ−などもある。
食品工業などで多く使われている酢の中には酸度20以上の強い酸味をもったものもあるが、これらは麦芽酢を蒸留した蒸留酢や酢を凍結、解凍させて作った濃縮酢などである。

■酢の醸造方法
中国から伝わった酢の作り方は、鹿児島県姶良郡福山町で現在でも作られている壺酢と言われるもので、静置発酵法または表面発酵法と呼ばれているものである。 これは設備費が少なく良質な酢が出来る方法だが、酢が出来上る迄に1年以上の長い時間を必要とするため、メ−カ−の大半は簡略した醸造法を用い、仕込み段階で種子酢を使い、アルコ−ルを含む原料液を加え混合する方法で、1〜2ケ月で酸化が終り、数ケ月で出来上がる方法である。
近代的な醸造方法としては深部培養法または通気攪拌培養法と呼ばれる方法がある。 これは醸造発酵タンク内に酸素を循環させて酢酸発酵を効率的に行い、短期間で酢を作る方法である。
その他には固定化法と呼ばれる微生物を固定化して反応を行う方法もある。

■酢の醸造過程
酢の醸造方法にはいくつかの方法があるが、化学的に説明すると次の通りである。

まず、澱粉質が糖に変化する(糖化)。
次に、これに酵素を働かしてアルコ−ルを作る。
最後にこのアルコ−ルを酸化させると酢酸(酢)ができる。

この3つの行程を通る事により酢が醸造される。

■調味酢
酢の原料は穀物類、果実類など様々であるが、これに、果汁や醤油、だし、甘味料などを加えたものがポン酢などの調味酢である。
最近は希釈健康飲料用として様々な果実酢に蜂蜜やロ−ヤルゼリ−、朝鮮人エキスなどを加えたものも多く市販されているが、大半は甘味が強く、料理には向かない。

■クエン酸サイクル
食酢の主成分は酢酸であるが、柑橘類の酸味はクエン酸である。 酢酸は体内でクエン酸に変わるので、体内での活性は酢酸もクエン酸も大差ない。 クエン酸は体内に吸収された後、イソクエン酸、リンゴ酸などの有機酸に変化し、血液の活性化や身体機能を円滑にするための潤滑剤的な働きをする。
1953年、H.A.クレブス博士は、体内に吸収されたクエン酸が様々な有機酸に変化する過程で熱を発生しながら炭酸ガスと水になり、最後にオキザロ酢酸まで変化を繰り返すと再びクエン酸に戻る過程がある事を発見し、これをクレブス理論のクエン酸サイクルと名付けた。 さらに、このサイクルが円滑に行われていると疲労の素である乳酸の発生が抑えられるといわれている。 プロスポ−ツ選手の多くはこの理論を取り入れ、積極的に食酢やクエン酸飲料を飲み、トレ−ニングによる筋肉疲労などの減少に利用している。

■血液レオロジ−
食酢は赤血球の変形能力を活性化させ、血液をサラサラにして血流を良くし、毛細血管まで十分に血液を流せる効果があり、冷え性、高血圧症の予防といった血液レオロジ−改善作用がある事が分り研究されている。


 
 
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