研究テーマ

砂糖・甘味料

砂糖は蔗糖(スクロ−ス)とも呼ばれるぶどう糖(グルコ−ス)と果糖(フラクト−ス)の結合した二糖類で、糖質と呼ばれる蛋白質、脂肪と共に三大栄養素の一つで、厚生省は食品として分類している。
砂糖の原料はサトウキビ、甜菜(ビ−ト)、砂糖椰子、砂糖楓(メ−プルシュガ−)などがあるが、大半はサトウキビと甜菜が占める。

砂糖の歴史は古く、インドでは紀元前三〜四世紀にはすでに砂糖黍を栽培していたと言われている。
日本に入ってきたのは奈良時代とされているが、一般庶民に使われ始めたのは江戸時代になってからである。
砂糖が甜菜から作られたのは十八世紀中ごろで、ドイツのマルグラ−フが甜菜から蔗糖の抽出に成功してからである。
それ以降北半球の寒冷な土地での砂糖の生産が可能となり、現在ではロシア、ヨ−ロッパ、アメリカなどで大規模に栽培、生産されている。

砂糖の分類方法は幾つかあり、製造場所からの分類と成分上の分類などがある。
さらに製造場所の分類として「精製糖」と「耕地白糖」呼ばれる砂糖に分けられる。 精製糖とは生産地で作られた糖蜜を含んだ原料糖を別の場所へ送り精製されたもので、日本の白糖の80%はこのタイプである。 また耕地白糖とは砂糖の原料から白糖までを生産地で一括して作るもので、甜菜糖の様にいたみが早い原料から作られるものである。
これに対し、砂糖の成分上の分類では含蜜糖分蜜糖があり、さらに細かくざらめ糖、くるま糖などがある。
含蜜糖とは、砂糖の中に蔗糖以外の糖蜜成分が含まれたもので、黒糖が代表的なものである。
分蜜糖は、遠心分離器やイオン交換膜を通して、糖蜜分を取り除き蔗糖の結晶を取り出したもので、ほとんどの白糖はこのタイプである。分蜜糖は更に細かく分類でき、結晶の大きなざらめ糖と結晶が小さくしっとりした感じのくるま糖に分けられる。
ざらめ糖にはほぼ純粋な蔗糖の結晶の白ざらめ糖やグラニュ−糖があり、少し糖蜜の風味を残した黄ざらめ糖がある。 氷砂糖はざらめ糖を煮溶かしてゆっくりと再結晶させたものである。
また角砂糖はグラニュ−糖に少しの蜜を付着させ押し固めたもので、粉糖と呼ばれるものはグラニュ−糖を粉状に挽いたものである。
くるま糖は、むかし砂糖を輸入したさい、箱にくるまの絵が刻印されていた所からついた名前で、結晶が小さくビスコと呼ばれる転化糖を少量ふりかけるため、しっとりとした感じで溶け易く、上白糖と呼ばれるものが代表的なくるま糖である。 くるま糖は甘さに癖がないので日本料理には使い安く、日本独特の砂糖といって良い。
欧米など諸外国ではほとんどグラニュ−糖が使われ、次に蜂蜜や、メ−プルシロップなどが使われる。

砂糖の身体的特性
砂糖は身体の中で、先ずぶどう糖と果糖に分解され、更に肝臓内で果糖もぶどう糖に分解され血液中を経由し、全身の細胞内に取り込まれる。 細胞内では酵素により酸化分解され、最終的には水と二酸化炭素になるが、この過程でエネルギ−が発生し、種々の生命活動が行われる。 また砂糖は多くの多糖類の中でも非常に短時間でぶどう糖に変わる優れた栄養源である。 疲れた時に砂糖の入った甘いものが欲しくなるのはこのためである。
しかし、金沢大学医学部の研究では、うさぎの飼料に30%の砂糖を加え継続的に摂取させたところ、動脈硬化が生じ毛細管に血液が送られず足裏に大きな壊疽が出来た事が報告されている。 また、短時間に大量の砂糖を摂取すると胃の粘膜を刺激し、発酵分解して胃の働きを阻害する事が知られている。
さらに、砂糖は虫歯の原因とされるが、直接的には人間の口腔内に棲息するミュ−タンス連鎖菌が作る酸性発酵物質が歯を溶かして出来るものである。 もっとも、ミュ−タンス菌は砂糖を唯一の栄養源としてしているので、間接的には虫歯の原因といえるが、長時間口腔内に残留させなければあまり問題はない。

砂糖の調理特性
砂糖は料理に甘さをつけるだけでなく、砂糖の持つ保水性を利用したゼリ−化や泡の安定化がある。
また、砂糖を多く含んだ溶液には酵素が溶けにくく、バタ−などの脂肪の酸化抑制効果や、パンを作るさい使われるイ−スト菌は糖分を発酵させるため、ふっくらと仕上がるなどの特性がある。