ブレインズ・タイムス第21号


 

 ひとりで過ごす静かな夜、心地よさについて考えた。例えば秋、赤くなったミズキの葉を心に描く時などは心地よいひととき。
 インテリアやファッションの世界の話として、心地よさというワードから思い浮かぶのは「イギリス人の生活」。古くから家族が住んできた家、手入れの行き届いた庭、深々とした椅子、代々使われてきた家具、着込んだ上着、古い食器や洗いこんだリネン。「慣れ親しんできた」を大切にするイギリス人の「もの」との接し方に心地よさの真髄を感じます。
 過日、ロンドンのパーティで老夫婦と話す機会がありました。話の内容は、日本の絵皿に描かれた植物や昆虫でしたが、美術や植物に対する深い知識と、誠実な話し方、しっくり馴染んだ服装に、時間を大切に過ごしてきた人だけが持つ本物の自信とは、こういうものかと感じました。おしゃれのセンスが良くてもそれだけでは駄目、知識があっても身についていなくては駄目なのだ、とつくづく感じて、こういう人たちこそ、出会った相手に心地よさを与える人なのだと思いました。知識や遊びをただ追いかけたり、仕事に追いまくられたりするだけで年を重ねるわけにはいかない、と静かな秋の夜の反省です。

ブランドうんちく講座   Liberty of London リバティ オブ ロンドン

 1857年 Arthur Lasenby liberty が創業した会社で、同社が経営する London , Regent Street にあるデパート名。インド、中国、日本を主とする東洋の絹織物・美術品を英国に輸入し、広めた。
Liberty Print と呼ばれ親しまれている生地は、東洋の影響を強く受けてデザインされた独特のプリントで、特に小花模様のプリントが有名。このため細かい花模様のプリントはリバティ製品でなくても、リバティ風と呼ばれ、パッチワークにも好んで使われている。デパートの建物は Tuder 様式で重々しい。クリスマスシーズンには、ショウウインドウから店内まで美しく飾りつけされるので、店内の重厚な階段を上がり降りしながら、見るだけでも楽しめる。

1995年11月10日(平成7年) 発行

第18号   一覧へ戻る   第22号


top

Copyright (C) by LapinAgile