味辞典

ナトリウムと塩素の結合した無色透明な方状結晶。世界で最も古い調味料だが、 調味料としてより以前に、地球上の全ての動物にとって必要不可欠なミネラルの 筆頭である。
食塩は塩分を含んだ水(海水、塩水湖、塩井など)や、太古の海が陸封され水分が蒸発し、岩塩層から採取(採鹹)される。
世界的にみる塩の生産の2/3以上は海以外の場所で採鹹される。日本では岩塩層はなく、塩井も非常に小さな部分でしかないため、古くから採鹹は海に頼ってきた。海水から生産された塩を海塩、海以外の場所(陸地)から生産された塩を岩塩と呼ぶ。

採鹹方法
最も古い方法は海水をそのまま食物に漬けて食したものであろうが、 塩の結晶として人為的に作られた方法としては『藻塩』がある。
藻塩は海水をホンダワラなどの海藻に着け、素焼きの器に入れ、焚火で焼き、 水分を蒸発させた残留物の中に含まれた塩の結晶を取り出す方法である。
その後、大規模な採鹹方法が考え出され、『入り浜式』、『揚浜式』、『煎熬式』、 『枝状流下式』、『イオン交換膜式』、『空中結晶法』などがある。

■入り浜式:海水の干満を利用した採鹹方法で、満潮を利用して海水を取り入れた後、流入出部を封鎖して海水を天日と風によって水分を蒸発させ採鹹する方法。
採鹹場所を入り浜式塩田と言う。

■揚浜式:海浜に海水を取り込む枠を設け、ここに海水を撒き、天日と風を利用して 水分を蒸発させ、塩の結晶を取り出す方法。
採鹹場所を揚浜式塩田と言う。

■煎熬式:底面積の広い釜(平釜)に海水を汲み入れ、火力を用いて強制的に水分を蒸発させ、塩の結晶を取り出す方法。
多湿の日本では安定した塩の生産方法であるが、人的な手間が掛かるため入り浜式や 揚げ浜式などと併用して、最終段階で用いられる場合が多い。

■枝状流下式:高い櫓を組み、葦や藁、細い木の板などの上から海水をゆっくりと 落下させて行く段階で、風と天日の力を用い濃厚な塩水(鹹水)を作り、残りの水分を蒸発させ塩の結晶を取り出す方法で、入り浜式や揚浜式に比べ使用土地面積が小さく出来る。
伊豆大島などで現在も行われている。

■イオン交換膜式:セラミック製のイオン交換膜を通して、海水中に含まれる ナトリウムイオンと塩素イオンのみを取り出し、99.5%以上のほぼ純粋な塩の結晶を 取り出す方法。
戦後の専売公社が推奨し、積極的に生産された塩で、国内の塩需要に対して天候に 左右されずに安定した生産を上げるために考え出されたもの。
塩化ナトリウムのみの味でマグネシウムやカルシウムなどのいわゆるニガリ成分が 含まれていないので、工業用としては使い良いが、食用としては塩辛いだけの 単調な味となる。

■空中結晶法:最も新しい採鹹方法で、大きく分けて散霧型と温風併用型がある。 基本原理は同じで、海水を霧状に空中に噴霧し、空中に張りめぐらせた細かいネットにふりかけ、水分蒸発を効率的に行い、塩の結晶を取り出すもので、温風併用型は 空中噴霧の際、下から温風を送りより早く結晶を取り出すもの。
 
 
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