研究テーマ

辛味

辛味は甘味、塩味、酸味、苦味、うま味などの基本五味には含まれていない味として分類されているが、我々が美味しいと感じる味の中では渋味と共に欠く事の出来ない味である。
何故、辛味は基本五味に含まれていないのかという理由は、通常我々が味を感知する場合、口腔内にある味蕾の味覚感知細胞を通して味として感じられるものを指し、辛味はこの味覚感知細胞を破壊する痛みとして脳に伝えられるもので、前者の官能的な味に対し、物理的な味であるとされているからである。
だしの会では、辛味は基本五味に準ずる官能的な味であると捉える。
この理由は、辛味料理を常食としているタイや韓国、南米の人々は、辛味の中にある様々な味の違いや辛さの違いを区別する事が出来、同時に甘味、塩味、苦味、酸味、うま味などの味を十分味わう事が出来る。
対して、辛味に慣れていない人々は一定以上の辛味料理には辛さを味わうだけで、辛さの中にある様々な他の味を味わう事が出来ないが、継続して辛味料理を食べ続けると、辛味を感じながらも他の味を識別する事が出来るし、辛味の強弱や性質も区別する事が出来る。
これらを考え合わせると、辛味は痛みを感じる細胞を破壊するが、味覚感知細胞そのものを破壊する事はない。 従って、辛味は甘味や塩味と同じ様に味覚感知細胞で感知でき味わえるものと考えらる。

辛味食材
辛味食材としては、山葵、生姜、大根、山椒などが上げられるが、筆頭はナス科のトウガラシである。 トウガラシの原産地は南米、中南米の熱帯、亜熱帯地域でこのあたりでは紀元前からトウガラシの栽培を行っていた形跡がある。 トウガラシは1497年、コロンブスによってスペインに持ち込まれ、その後インドや東南アジア、ヨ−ロッパ各地に広まっていった。 日本に伝わった経路と時期についてはいくつかの説があるが、1540年代から1590年代に持ち込まれ、中国へは日本から持ち出されたと言われている。
日本でトウガラシの呼称は幾つかある。 1593年の「他聞院日記」にはトウガラシの和名はなく、胡椒の一種と解されていた。 トウガラシの語が見られるのは1638年に書かれた「毛吹草」頃からである。 古くから中国と交易をしていた長崎ではトウガラシの音が「唐枯らし」に通ずるとして、コショウと呼び、今でもトウガラシと柚子、塩を混ぜた辛味調味料を「柚子コショウ」と呼んでいる。 その他、ポルトガルから持ち込まれたものとして、南蛮、または南蛮胡椒と呼ぶ所もある。
 
 
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